2022年10月22日

動く世界の中で

動く世界の中で

自転車はいいな
自転車に乗っているときは
いつも世界がとどまらず動いている

これがいいのだ
日常生活はなんだかんだ緊張するのだ
今日も小雪の降りかかるのだ
降り積もったものを自転車の風が
ゆっくり吹き払ってくれる

遠くまで旅をしても
自分の心の奥へと向かっている
心の奥で出会った自分に「やあ」と
手を振る

自転車乗りとしても有名だった希代のロックンローラー忌野清志郎の唄う『自転車ショー歌』はブッピョーッと軽快なサックスから始まる
「子ねこがミヤータ コルナーゴ 僕の彼女はビアンキーで~」と自転車のメーカー名の語呂合わせの駄洒落唄なんだけれども
「世の中そんなにアマンダじゃ ないから人生コロンブス 次に行くのはどのムラーカ~」
日本中を歌って周る旅芸人であり自転車でお遍路をめぐり奥の細道をたどる行脚のココロを持った清志郎が唄うとゴキゲンなリズムにウキウキしながらも泣けてくるのだ

私はメルカリで買った
ジャイアントのANYROADに乗って
仕事場までの往復24キロを通っている
電車や車じゃ味わえない感覚 近くが遠くて 遠くはやはり遠いけど
ココロはもっと遠くを走っている
東八道路をダンプが埃を巻き上げ走ってゆく

ああ アンダルシアの
荒野をひたすら走ってる気分だ
自転車はいいな

松原東洋
出典:
1: 時々輪栖レ太新聞
2: 「自転車ショー歌」唄と編曲:忌野清志郎 作詞:星野哲郎 作曲:叶弦大
3: 『サイクリング・ブルース』著:忌野清志郎 / 出版:小学館(2006/6/8)